ものづくりと物語

Vol.1 スチームオーブンレンジ | 本当においしい蒸し料理を、手軽に。
開発技術部 金子伸子

“ものづくりの町”として世界的に知られる新潟県燕三条地域に本社を置く「ツインバード」。その商品にはすべて、開発者の熱い思いと、物語が存在します。

今回はツインバードの新商品「スチームオーブンレンジ」の開発秘話を、担当者目線でお届けします。

 

 

スチームオーブンレンジ

ないなら、私たちが作るしかない

私が開発に関わった、ツインバードの『スチームオーブンレンジ』は、「おいしい蒸し料理」が手軽に作れることを目指した家電です。私は、「蒸し料理」が大好きです。特に好きなのが、冬の肉まん。外はふわっと、中はジューシー。たまりませんよね。

 

でも肉まんを、家庭で作るのはちょっと大変。調理家電の「蒸し」機能はおまけ扱いで、出る蒸気が少ないこともしばしば。なかなか本格的に「蒸し料理」ができる調理家電はないですし、あっても非常に高価です。

 

ないなら、私たちが作るしかない。そして作るなら、「本当においしい肉まん」が作れる調理家電にしよう。「スチームオーブンレンジ」の開発当初から、そう心に決めていました。結果、たっぷりの蒸気が庫内を包む、自信作が完成しました。しかしその道のりは、決して平坦ではありませんでした。

目指したのは、あの”ふっくら感”

さっそく開発に取りかかったものの、いきなり壁に直面しました。試作品のスチーム機能で蒸し料理を作ってみたのですが、理想の“ふっくら感”とは程遠いものだったのです。“ふっくら感”には、水分が重要なことはわかっていました。単純なレンチンで作った蒸し料理がふっくらしないのは、水分が抜けてしまうからです。しかし、水分があればいい、というわけではありませんでした。ただスチームをあてて「蒸す」だけでは、ふっくらとは仕上がらない。まんべんなく、ムラのないように蒸さなければ「おいしい蒸し料理」はできあがらないことが、テストを通して見えてきました。

鶏肉をはじめ、さまざまな食材で調理実験を繰り返した

 

この「まんべんなく蒸す」を実現するのが、非常に難しいことでした。庫内のスチーム吹出口に近い部分にはたっぷりと蒸気があたるのですが、そこから遠い場所にはほとんど蒸気が当たらず、余熱で温めるような状態になってしまいました。どうしたら、蒸気で全体をまんべんなく蒸せるのか。私は大いに悩みました。朝起きてから、仕事中も食事中もお風呂の中も、ずっとそのことばかり考えていました。そんなある日、ふと、「おいしい肉まん」に共通するある調理法を思い出し、そこにヒントを見つけました。それが、「せいろ蒸し」です。

せいろ蒸しから生まれた独自技術「Wスチーム」

「せいろ蒸し」は、円形の枠に編み込んだ容器を、沸騰した湯の入った鍋の上に置き、加熱された水蒸気で食材を加熱する調理法です。容器いっぱいに充満した蒸気が内部を循環し、上下から食材を包み込むように蒸すことで、あの“ふっくら感”を生み出しています。ならば、スチームオーブンレンジでも、「食材を上下から蒸気で包む」ことができれば、あの“ふっくら感”が再現できるのではないか。独自技術「Wスチーム」のアイデアが芽生えた瞬間でした。私たちは上下から蒸気をあてる構造の開発に、さっそく取りかかりはじめました。

 

最初の難関は、スチーム吹出口を設置する「位置」でした。2つある吹出口の調整は当然、初めてのことでした。たった2つの位置を決めるだけ。なのに、ちょっと位置を変えるだけで、ほかの機能に干渉してしまう。私たちは、ミリ単位の調整を何度も繰り返しました。試作品をいくつも作り、さまざまな食材でテストをしました。そしてようやく、均一に蒸気があたる、ベストな位置を見つけることができました。

悩んだ末に、操作パネルはシンプルに

「Wスチーム」が完成したことで、スチームオーブンレンジの「蒸す」機能は大きく飛躍しました。さらに開発チームからは、「あんな機能やこんな機能もあってはどうか」と、さまざまなアイデアが出ていました。ですが、ここで私は開発チームのリーダーとして、立ち止まって考えました。メーカーが「どうだ、すごいだろ?」という機能をたくさん用意しても、実際に利用するユーザーにとって使いづらいなら、それは自己満足でしかない。ひとりのユーザーとして考えたときに、説明書を読まなくても使い方がわかる。それが、何よりも重要だと思いました。

 

ただでさえ、レンジ、オーブン、スチームといった多数の機能が搭載されているのが「スチームオーブンレンジ」です。どうしたら、操作性が向上するのか。私たちは必死に考えました。たとえば、肉まんやサラダチキン、ピザなど、調理メニューを分類して番号を振る。もしくは、ダイヤルを回して、調理オプションを細かく指定していく方式もある……。目の前に、まるで海のように果てしなく広がる選択肢を前に、私は呆然と立ち尽くしていました。結局、ひとりでいくら考えても、最適な答えは見つかりませんでした。

 

しかし、困っていたら助けてくれるのがツインバードです。社員同士の距離が近く、とにかくみんな真面目。頼れば必ず、自分のことのように一生懸命に悩み、アドバイスをくれます。そのなかで「シンプルなのに、感動的な体験が待っている。それこそが、いい家電なのではないか」という意見がありました。私はその言葉に、はっとしました。メニューの項目が増えれば、探す手間がありますし、該当しない料理もある。ならば項目を増やすのではなく、むしろ最小限にした方が使いやすくなることに気がついたからです。

 

こうして、操作は“必要にして十分”を理想として掲げ、余分な選択肢を極力削ぎ落としていくことにしました。最終的に、よくある、付属のレシピを見ないと使いづらい料理名毎の自動メニューはなくし、「蒸す」「低温調理」「煮込む」「揚げる」という調理方法から選ぶだけで使える理想の操作性にたどり着くことができました。

発売数ヶ月前に訪れた、最大のピンチ

あとは発売するだけ。そう安堵していたある日、大きな問題が発生しました。食材を蒸す過程で、温度の「あたりムラ」が見つかったのです。庫内の中央に置いたときにはわからなかったのですが、置く場所によっては温度にムラが出てしまう。もう、発売は目前に迫っていました。しかしお客様に「レンジの真ん中のこの位置だけに置いてください」とお伝えするのは、不親切です。好きなところに食材を置いて、本格的な蒸し料理が楽しめる。そうでなくては意味がない。でも、時間がない。だからといって、妥協したくない……。

 

悩みに悩んだ末、私は使い勝手を第一に考えて、再設計を決断しました。発売数ヶ月前からの作り直し。これは通常なら、“絶体絶命”の危機的な状況です。絶対に間に合わせたい。とにかく必死に商品の細かな調整を繰り返し、何度もトライ&エラーを繰り返しました。構造から見直し、どこに問題があるのか。時間がない中、何度も何度も開発スタッフと検討を重ねました。

 

そしてついに、再設計の甲斐あって、「あたりムラ」をなくす調整パーツ「スチームアタッチメント」を創り出すことができたのです。このパーツはスチーム吹出口に取り付けてあります。蒸気を放射線状に噴出することを可能にし、まんべんなく食材を包み込む効果を生み出します。発売にも間に合い、より便利で本格的な蒸し料理が楽しめる「スチームオーブンレンジ」をお届けすることができました。

日々に彩りを与えてくれる「スチームオーブンレンジ」

料理は毎日のことですから、「作る」と「食べる」の両方が楽しくないと、つまらない。

 

ツインバードの「スチームオーブンレンジ」は、そんな思考の方にこそ、ぴったりの調理家電だと思います。加えて、おいしいごはんを食べたら気分が上がる方にもおすすめです。きっといつもの毎日に、想像以上の“彩り”を与えてくれるはずです。私にとって、開発したすべての商品は、自分の子です。かわいくて仕方ありません。ですからひとりでも多くの方に、「スチームオーブンレンジ」の魅力を知っていただきたいですし、叶うなら好きになってもらえたら、こんなにうれしいことはありません。

金子伸子(かねこのぶこ) ツインバード 開発技術部

開発技術部に在籍10年。主にキッチン家電の開発を担当。

スチームオーブンレンジのほかに、ホームベーカリーやオーブントースターなどの調理家電の開発に携わる。

開発における信条は「使う人の気持ちに寄り添うこと」。

スチームオーブンレンジ

蒸気で包み込むように蒸す、Wスチームを搭載したスチームオーブンレンジです。低温調理も自由自在。おいしい蒸し料理を、ご家庭で簡単にお楽しみいただけます。

 

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